熊野(yuya)


能楽「熊野ゆや」から、熊野と枝垂桜を描いてみました。


拡大です↓

◆ あらすじ ◆

遠江国池田宿いけだのしゅく熊野ゆやは、平宗盛たいらのむねもり(清盛の三男)の寵愛を受け、都に留め置かれていた。

病気の老母をもつ彼女は度々暇を乞うものの、なかなか帰郷の許しが出ない。

そうする内、余命僅かの身を嘆く母の手紙を携え、侍女の朝顔が訪ねて来た。

熊野は手紙を宗盛の前で披露するが、宗盛は帰郷を許さず、彼女を花見の供に連れ出してしまう。

一行は東山へと向かい、熊野は京の様々な景物を目にしては愁いに沈む。心ならずも酒宴で舞を舞っていると、急に時雨が来て、花を散らしてしまった。

これを見た熊野は、母を思う和歌を一首読み上げる。

その歌に心動かされた宗盛は、ついに彼女の帰郷を許すのだった。





熊野御前は、平安時代末期に池田荘の庄司の藤原重徳の娘として生まれ育ち、

当時遠江国司だった平宗盛に見初められて都に上り、寵愛されました。

平家物語や謡曲などで広く知られているそうです。

熊野が祈りを捧げた庵の跡が静岡県磐田市池田の行興寺で、『池田熊野の長藤まつり』が現在も開催されています(*’▽’)



私も引っ越す前は静岡県に住んでいたので、二回程でしたが熊野で謡の会に参加しました。

まだ習い始めの頃で緊張して景色を見ている余裕がありませんでしたので(笑)記憶が曖昧ですが、

趣のある良い雰囲気の場所だったと思います。

いつだったか熊野ではもう謡の会をやらなくなってしまい残念でした。


熊野は「松風」と並び昔から人々に親しまれてきて、「熊野松風は(に)米の飯」と言われるほど、飽きのこない面白さと称えられてきたそうです。

熊野の能はまだ実際に観たことがないのですが、序盤はちょっと眠くなってしまいそうなほどゆったりとしていて、多分観に行っても寝てしまう気がします…井筒とかも(笑)

理解して寝ずに能が観れるようになったら一人前なのかなと自分の中で昔から勝手に決めていましたが、こういった三番目物は本当に眠くなってしまいます(;´・ω・)

綺麗な謡の場面になったりするとハッと目が覚めますが、それまでうつらうつらしてしまうんです。。

熊野は最初の頃お稽古したので節を覚えるので精一杯で、詞章などはあまり理解できていませんでしたが、

今回改めて見返してみるととても綺麗な謡なのだと気付かされました。

良い場面が多く、どこの場面の詞章を抜粋しようかとても悩みました。

今回の詞章は熊野が宗盛の前で母から届いた手紙を読み上げる場面です。


唯返すがえすも命のうちに
   今一度見まゐらせたくこそ候へとよ

老いぬればさらぬ
   別れのありといへば

いよいよ見まくほしき君かなと
      古ることまでも思出の
           涙ながら書き留む


「 唯今一度熊野の顔を見たい。

親子の縁は一世と言うが、この世にさえ添い得ないでは孝道にも外れよう。

古歌に年寄るといよいよ人に逢いたくなるとあるが、これを思い涙ながらこの手紙を認めた。」

病状が思わしくない熊野の母が、今生の別れが来る前に一目でも会いたいという切々とした願いを手紙に込めています。

しかし熊野の帰郷を許さず、宗盛は清水寺へ無理矢理連れていってしまいます。

清水寺までの京都の春の様子が、京都に詳しい方は読んでいると順々に情景が頭に浮かんでくるそうです。

この牛車(作り物)に乗っているシーンもとても綺麗なので次描いてみたいです。

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