
能楽「巻絹」から、熊野本宮の巫女を描きました。
巻絹とは、絹を巻いた反物の事だそうです。
物語は、
帝の臣下が、巻絹を熊野権現に奉納せよとの帝の命令を受けた。
都の男は山々を越える途中、音無天神に立ち寄り参拝する。
そこで男は冬梅の香に心惹かれ、一首の歌を詠み神に捧げる。
その後、奉納の期日に遅れたという理由で男は従者に縛り上げられる。
そこへ、音無天神が取り憑いた巫女が現れ、男が前日に音無天神を参拝し手向けた和歌によって苦しみを和らげられたのだから、縄を解くようにとの神託を告げる。
不審がる臣下に男は和歌の上の句を詠み、続く下の句を巫女が詠じてみせると、男の疑いは晴れて縄は解かれる。
巫女は熊野権現を讃美し神楽を舞い、神憑りの状態となると髪や御幣を振り乱し、狂乱のうちに激しく舞う。
やがて神々は離れ、巫女は正気に立ち戻るのであった。
というお話です。
書いてある詞章に、
證誠殿(しょうじょうでん)ハ阿弥陀如来
十悪を導き 五逆をあハれむ
中の御前ハ 薬師如来
薬となって 二世を助く
一萬文殊(いちまんもんじゅ) 三世の覚母(かくぼ)たり
十万普賢 満山護法(まんさんごほう)
聲(こえ)のうちより狂ひさめて
又本性にぞ なりにける
とあります。お稽古で今この巻絹の仕舞を習っているのですが、
この詞章の意味が難しくて全くもって分からない為覚えられず。。。
理解するために今回絵に描いて、意味も調べてみました。
熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社を熊野三山というそうですが、
舞台は和歌山県の熊野本宮大社です。
主祭神は家都美御子大神
家都美御子大神は素戔嗚尊と言われているようです。
謡の中の證証殿は全部で十二殿あるなかの第三殿で、阿弥陀如来の仏名を配されておられるそうです。
中の御前は第二殿の速玉之男神で薬師如来の名を配し、
一万宮十万宮が第九殿の軻遇突智命で文殊菩薩と普賢菩薩の名を配されています。
詞章の意味としては、
證証殿の阿弥陀如来は十悪を犯した者を導き、五逆の罪ある者を憐れみ給う。
薬師如来は現世来世に亘り衆生を助け給う。
一万の宮は文殊菩薩で過去・現在・未来に悟りを与え給うのである。
十万の宮は普賢菩薩で、その他熊野全山は仏法守護の神々で満ちている。
と謡本の解説に書いてありました。
巫女は神憑りの状態で、御幣(白い紙の束のようなもの)を手に持っています。
神が巫女に懸かって、舞い狂う狂女の意味があるそうです。
白い装束が多いようなのですが、薄めの色で描いてみたかったのでこの着物の色になりました。
薄いですが微妙にグラデーションになっています。
少し可愛い感じになってしまったので下の着物を地味めの色合いにしてバランスを取りました。
後ろに見えるのは熊野本宮です。
何故か水の上で舞っている絵のようになってしまいましたが、能の話通りで行くと本当は森の中です。。。
時間帯はイマイチ読み取れないのですが、昼間だと明るくなり過ぎるかと思い日が暮れ始める頃をイメージして描いています。
墨画の方でも描いてみましたのでそちらも宜しければご覧になってみてください。
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