能楽「和布刈」から、月の明かりの中で舞っている竜女(天女)を描きました。
少し顔のほうが見えずらいので↓アップ画像も上げます。
和布刈の物語は、
長門の国早鞆明神の神主が、例年通り十二月晦日寅の刻に和布刈の御神事を行おうとしていました。
夕闇迫る神前に供物をする人がいるので、神主が問いかけると海女と漁夫だと答えます。
そして昔、豊玉姫と契りを結んだ彦火火出見尊が姫との約束に背き姫の産屋をかいま見て以来、
海と陸に境ができたが、早鞆の神祭の日は神慮により海の宝、海藻も心のままになる、と語り、
また二人は天つ乙女と龍神であることを明かし姿を消します。
やがて音楽が響き、月光と妙なる香の中竜女が現れ舞を舞います。
寅の刻になると天地鳴動して沖より竜神が現れ、海底をうがち夕潮を退けたので海底の砂が平々となります。
神主がこの間に松明をかざし、鎌で和布を刈り取り神前に供えると、風雨は鎮まり海も静かになり竜神は竜宮に跳び入るのでした。
というお話です。
場所は長門国早鞆(福岡県)、和布刈神社の神事を基にした能です。
和布刈神事
毎年旧暦元日の早朝に行われます。
横代湯立神楽(よこしろゆたてかぐら)が奉納された後、3人の神職が干潮の海に降りて鎌でワカメを刈りとり、それを神前に供えて航海の安全、豊漁を祈願します。漆黒の闇を背景に烏帽子、狩衣、白足袋に草履姿の神職たちが、松明を頼りにワカメを刈りとる様子は幻想的で、関門海峡両岸の人々に春の訪れが近いことを感じさせてくれます。(北九州市のHPより)
仲哀天皇の9年、神社創建以来続く神事だそうです。
旧暦の元日とは現在の一月中旬~2月下旬との事。
ワカメを刈り取る時間は、午前2時30分から4時頃の干潮時(!!)。真っ暗のなか松明を便りに冷たい海の中に入るのはとても大変そうです…((+_+))
ワカメは神様の依り代ともされていて、どんどん伸びて自然に繁茂するのでとても縁起の良いものとされており、古くは朝廷などにも献上していたようです。
海女と漁夫は「龍女(天津乙女)と龍神である」と言い残して去りますが、
今回描かせて頂いた龍女について詳しく調べてみると、
彦火火出見尊(和布刈神社の祭神)、豊玉姫、瀬織津姫など何人か出てきたので色々謂れがあるようですが、今回は瀬織津姫を意識して描きました。
理由は、瀬織津姫は月の女神であり、 潮の満ち引きを司る「導きの神様」ともいわれている、
穢れを祓う禊の神様とあり、能の竜女が登場する、
《月の光が水面に映る頃、松の重なり合う音に合わさって音楽が聞こえてきて、
妙なる香(音楽)の中に竜女が現れ出でて舞う》 この場面に合ってるように感じた為です。
また、瀬織津姫は天照大神の荒魂(神霊の勇猛な側面のこと)であると言われているそうです。
紫の長絹を着る事が多いようですが、和布刈神事のワカメに因んで緑っぽい色と合わせてみました。
下に着けている大口袴は白ですが、そのまま白だと浮いてしまうのでちょっと柄を入れて、影を濃くしました。本当は無地だと思います(@_@)
月を背景に、竜女そのものが光って浮かび上がっているようなイメージで描きました。
瀬織津姫の事も合わさったお陰で、良い雰囲気を絵に表すことが出来たように思います(#^^#)
※追記
父が瀬織津姫ファンなので説明を書いてもらいました。私の文章ではありません(笑)
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紀元700年の大宝年間の頃、時の朝廷の都合により歴史から抹殺されたという女神、「瀬織津姫(せおりつひめ)」。
一説に、天照大神は実は男神であるにも関わらずその神を女神とするために、実の妃である「瀬織津姫」を日本中の記録から抹殺し封印したという。
従って「古事記」「日本書紀」などの古文書にもその神名の記載はありません。
しかし神道の「大祓祝詞の言霊」からはさすがに消すことはできず現在に至っています。
また時の権力により「瀬織津姫」から別の神への祭神替えを強制された神社の神職達によって、御神体はそのままで「弁財天」や「水の神」「龍神」など多くの神の名として密かに祭られてるお社もあります。「和布刈神社」もその一つのようです。
明治維新の時もそうですが権力は都合の悪いことは歴史をはじめ、たとえ神社、仏閣などの聖域であろうと思うようにしてしまうのが常のようです。
「瀬織津姫」は祓戸四神の筆頭神として下記大祓祝詞には記されています。
『・・・速川の瀬に坐す 瀬織津比売と云ふ神 大海原に持ち出でなむ
此く持ち出で往なば 荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百會に坐す
速開都比売と云ふ神 持ち加加呑みてむ 此く加加呑みてば
氣吹戸に坐す氣吹戸主と云ふ神 根國 底國に氣吹き放ちてむ
此く氣吹き放ちてば 根國 底國に坐す速佐須良比売と云ふ神
持ち佐須良ひ失ひてむ 此く佐須良ひ失ひてば 罪と云ふ罪は在らじと
祓へ給ひ清め給ふ事を 天つ神 國つ神 八百萬神等共に 聞こし食せと白す』
私は伊勢神宮をご参拝するときは、本殿はさることながら、人の気配の少ない傍らの「荒祭宮」をお参りしています。
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